2024.01.20
⑴デューデリジェンスの実施の結果を踏まえて、最終条件交渉
↓
⑵クロージング条件の設定
↓
⑶最終契約の締結
↓
⑷クロージング準備
↓
⑸M&A対価の支払い、クロージング
⑴ デューデリジェンスの実施の結果を踏まえて、最終条件交渉について
買い手は、デューデリジェンスで発見したリスクに基づいて買収価格やM&Aスキームを見直し
売り手に対しリスク低減策の実行や表明保証などの設定を提案します。
ここでの交渉が最後の交渉となりますので、慎重に交渉をしましょう。
ここでのポイント
今後の従業員の雇用が継続されるかどうか、給与水準や保険、待遇など、売り手にとって
買い手に守ってほしい事項について交渉で明確にしておく必要があります。
買い手としては、それを受けられるかを確認しましょう。
特に買い手のポイントとしてはキーマンやそのビジネスの強みがちゃんと
買った後も効果を発揮できるように最終交渉をします。
特に中小企業だと、ある一人がいなくなると急に会社が回らなくなることがありますので
その方がちゃんと引き続き勤務してくれるかを確認する必要がありますが
その前に最終契約やクロージングの条件に加えておくことが事故防止となります。
そして、この段階での条件交渉ではあまりに多くの譲渡の条件を追加で提示することは避ける方がよいでしょう。なぜならこの段階での条件の追加は難しいことが多いためです。
すでに基本合意でまとまっているにも関わらず、条件を追加したり、再度の譲渡価額の交渉は
譲受企業に不信感を与えることになりかねません。
またこのような条件交渉は、対面でするのは双方言いたいことも言えず難しいことが多いので
仲介やアドバイザーに頼む方が結果的に交渉がスムーズにいきます。
ここの他の大事なポイントは、M&Aで自分が何を重視しているか、相手が何を重視しているか
何を得るためにこのM&Aを検討しているか、改めて考えて、双方の本音を知ることです。
⑵ クロージング条件の設定
クロージングの前提条件とは、M&Aを実行する際の譲れない条件を言います。
つまり言い換えるとM&Aを実行するための前提条件です。
具体的には、クロージング日までの誓約事項が履行されていることや
各種法律上の手続きが完了していること、業務上の許認可の取得がなされていることなどがあります。
それが実行されないとそもそもM&Aの意味をなさないためこのような条件を設定します。
一方の当事者がいずれかの前提条件に違反した場合
他方の当事者には契約を解除する権利が与えられることになります。
ここでのポイント
ここでは、まず「クロージング条件」の設定が重要なポイントになります。
M&Aの最終契約の締結からクロージングまでは
クロージングの前提条件を満たすために必要な手続きを行う必要があるため
それに要する一定期間を空けるのが一般的です。
ただし、最終契約締結日までにクロージングに必要な全ての手続きが完了している場合は
同日に実施することもあります。
クロージングと一口に言っても、実際にはさまざまな手続きが必要になります。
具体的には、重要な取引先との契約を承継するための同意の取得、事業に必要な許認可の取得
役員に対する借入金の返済などを行ったりします。
両者が安心・安全なM&A/事業承継を進められるために
実際の契約書では、譲渡価格等の条件だけでなく、クロージング条件や相手方に対する表明・保証
誓約事項等、数多くの事項について、特約として追加して定める必要があるため
通常の売買契約書に比べボリュームのある内容になります。
それらのクロージング条件が満たされた場合のみ、譲渡がなされます。
そのためクロージング条件を漏れなく設定して達成することと
その内容を契約書へ反映させることがより良いM&A実現の大事なポイントです。
⑴に記載したキーマンがちゃんと引き継がれるかなどをこのクロージングの条件に入れておくことが重要です。
そして、その条件を反映させた最終契約書(DefinitiveAgreement、通称「DA」)とは
M&Aの最終段階において締結される、当事者間の最終的な合意事項を定めた最も重要な契約書です。
最終契約書は、これまでの当事者の交渉を通じて確定した合意事項をすべて盛り込んだものです。
契約当事者の一方が最終契約書の内容に違反し、当該違反により他方当事者に損害が生じた場合には
当該違反をした当事者に対し、損害賠償請求ができる旨が定められた法的拘束力を持つ契約となります。
ここのポイントとして、必要な表明保証や各条件が適切に最終契約に反映されていることを必ず確認しましょう。契約書に記載がない条件はないものとされますので注意が必要です。
買い手として注意する必要がある点は、表明保証に入れればなんでも大丈夫!という考えは危険です。
もちろん表明保証に加えることで、相手方に損害賠償請求することができますが
仮に損害賠償請求しても相手方にお金がなくて払えなければその債権はあってないようなものです。
特に中小企業の場合、売り手はM&A後に引退したりする方が多いのでお金がないことがあります。
働いていないので払えないというのは想像に難しくないはずです。
表明保証に入れれば絶対安全というわけではなく、あくまで損害賠償請求できる状態になるだけであり
その金額が回収できるかは別の問題という事は忘れないようにしましょう。
表明保証に入れないで譲渡価格に反映する方が実は買い手にとってリスクが少ないですが
それは売り手が嫌がることが多いので、慎重に落としどころを探します。
⑶ 最終契約の締結
各条件交渉が終了したら、最終契約を締結していきます。
最終契約締結からクロージングまで、およびクロージング後についての
売り手・買い手の義務が誓約事項として規定されます。
ここで買い手は、売り手に対して表明保証とよばれるM&A契約に関わる事実関係や法律関係について
真実であること、正確であることの表明してもらうチャンスがあります。
この表明保証は、買い手のリスクを減らすために行われます。
主にデューデリジェンスで発見されなかった、あるいは発見したが具体的な対処ができなかった事項
などについて、売り手の立場で保証してもらうことで買い手のM&Aに対するリスクを減らすことができます。
限られた期間で行わざるをえないデューデリジェンスでは重要な事実関係や法律関係を
全て調査することは不可能であり、発見しても具体的な対処ができないこともあるためです。
デューデリジェンス業務は、その種類にもよりますが、基本的にあくまで調査であり
事実関係を確かめるまでは実施しないことがほとんどです。
⑷ クロージング準備
そのM&Aに沿った誓約事項や前提条件などの契約内容に従い
クロージングに向けた準備を行います。
具体的には、債権者保護手続きや株主総会の開催・決議、重要な従業員の転籍同意書の取得
重要な取引先の契約承継の同意、業法上の許認可の取得、非事業用資産の売主による買い取り
役員に対する借入金の返済などがあります。
これを適切に達成しないとクロージングができませんので注意が必要です。
ここでのポイント
最終契約書の締結とクロージング日が同日となる場合は、前もって必要書類を取り揃えておく必要があり
印鑑証明などは、忙しい中役所や法務局に取りに行かなくてはなりません。これが結構大変です。
成約日ギリギリになってしまうと、書類の入手が間に合わなくなる可能性も出てきます。
そのためチェックリストには、書類名だけではなく取得するスケジュールなども記載すると良いでしょう。
そしてそのスケジュールが実行可能かをちゃんと確認しましょう。
つまりここでのポイントは、クロージングをスムーズに行い、確実にM&Aを実行するため
クロージングに必要な事項を事前にスケジュールも併せて確認することです。
そのためには事前に双方でクロージングに必要となる項目・手続き・スケジュールを洗い出し
お互いに認識をあわせながら作業を進めることが重要です。
ここは売り手買い手で違いはありません。協力して遅滞なく進めていきましょう。
また重要物品については、売主・買主間で、クロージング当日に何を引き渡すかを事前に協議する必要があり
これについてもスケジュールの中に盛り込む必要があります。
小規模M&Aでは特にそうですが、従業員・取引先には事前告知しておくことをお奨めします。
買い手は特にキーマンやビジネスの根幹について絶対に確認しましょう。
従業員に告知するタイミングはここで問題ありませんが、キーマンはもう少し事前に
内密にコミュニケーションを取ることをオススメします。
他にも可能であれば最終契約締結前後に、重要取引先等とは買主も交え面談し
グリップしておくことを推奨します。
⑸ M&A対価の支払い、クロージング
M&Aにおけるクロージングとは、M&A取引の実行そのものを指します。
M&Aには様々なスキームがありますので、「M&A取引の実行」が具体的にどんな手続きを指すかは
スキームによって異なりますが、以下一般的なスキームの「株式譲渡」と「事業譲渡」
の場合のクロージングを一例として記載します。
「株式譲渡」の場合のクロージング:
売り手から買い手へ株式の譲渡がなされ、買い手から売り手へ株式の譲渡代金が支払われることを言います。
「事業譲渡」では、移管される資産・負債、権利義務について個別に移管手続を行い
資産によっては登記など第三者の承認を得ながら進めていく必要があるので
一定の日付でクロージングするものではないことが一般的です。
買い手から譲渡対価の受領を以ってクロージングとなります。
つまり最終契約書に基づくM&A取引が実行され、経営権の移転が完了し
その対価が支払われることをクロージングと言います。
前述の作業が全て完了し、譲渡対価の支払いや株式の譲渡などをすべて完了して
やっとクロージングを迎えます。
クロージング日においては、当事者間で、M&Aの実行・完了のために必要な書類の確認と
その書類の有効性などの確認、書類の署名押印の確認などが行われてから
譲渡の手続きとそれに対する譲渡代金の支払いが行われます。
最終契約日からクロージングまでは一定期間あけることも多いですが
契約日までにクロージングに必要な手続きがすべて終了している場合や
契約日後に必要な手続は適正に完結させることが前提で
契約日と同時にクロージングを実施する場合もあります。
基本的には売り手の内容と買い手で大きく変わりません。
しかし、買い手は買った後、同じ会社として運営していくので
買った後のことも考えて契約関係やクロージングなどについて丁寧に確認する必要があります。
ここでのポイント
いよいよ双方でクロージング書類を確認し、問題がなければ売り手へ対価を支払います。
しかしクロージングにおいて、当事者間で署名押印も含めた必要な書類がちゃんとそろっているか等
実施すべきクロージング前提が達成されているかの確認をします。
それらに漏れがあった場合、契約破棄しM&Aが失敗となる危険性があります。
また、クロージング手続きは、法的有効性を示すものにもなるため細心の注意払って行いましょう。
もしクロージング手続きに不備があると内容によっては、そもそもM&A自体が法的に無効
あるいはM&Aが失敗となってしまいます。
ここのポイントとして、クロージングでは、全ての手続・書類をまとめて丁寧に確認し
正確に抜け・漏れが無いように実施する必要があります。
確認不足により後でトラブルになることを事前にしっかりと防止しましょう。
買い手はM&A後が本当のスタートですので、きっちりスタートできるように
相手に任せっきりにすることなく確認していきましょう!
買った後は同じグループ内の会社ですからね!
結果、最終契約書を調印する締結日からクロージング日までは
一定の期間を空けることが多くなっております。
上記をふまえても、クロージングの前提条件が満たされなかった場合には
M&A取引を実行しない、またはクロージングの前提条件を変更することになります。
ここを終えればM&Aが成立となります!最後まで気を抜かずに
慎重かつスピーディーに対応していきましょう!